Like と Love 間

この場所でこのことを書いていいかわからない。
けれど今一番書きたいことのひとつだ。


人との関係はひょんなことから変わっていく。
つい昨日まで表面的にしか知らなかった人の心の裏やこれまでの人生をある日突然見ることになったりする。
そして相手に対する知識を積み重ね、秘密を共有していくのだ。


彼は表面的には自由で気ままで何の問題のなく暮らしているように見える。
社交的で多趣味、話題が豊富なので女性関係も多そうだ。
はじめは取り立てて興味もなかったのだが、とても英語が上手なので
お友達登録をさせてもらった。それでも私にとっては上級者のひとりだった。
それがある時を境に相手のことを少しずつ知るようになった。


声は柔らかくてエロティック。そのバイブレーションは鼓膜に一瞬まとわりついた後、二つの支流に分かれて脳と子宮にそれぞれ届き、そこから血流に乗ってゆっくりと全身を駆け巡った後、鼓膜に帰ってくる。鼓膜はチェロのように音を震わせ再び全身に送り出す。
声は次第に減衰して耳の奥にすぅっと沁みこんで記憶に刻まれる。
私はその間、彼の言葉に対する自分の反応がぎこちなくなっているのに気づく。
それを隠そうと必死になる。頭のいい彼には恐らくそんな私の様子が見えている。


私は人間的にも尊敬している。真面目で真っ直ぐな努力家。
そして、私の想像を超えるような苦しみも体験している。どん底から這い上がってきた人の逞しさ。だから強くて優しい。
余計なことは言わない。余計な励ましもない。たったひとことで、私は理解してもらえたという安らぎを得る。


ぶっちゃけ惹かれている。
私は彼からいろいろなものを与えられている。彼のエネルギーが流れ込んでいる。
自信に満ち溢れた言葉と包み込むような暖かさ。ドキドキ感と安心感。
反面、これはただのゲームなのだと言い聞かせてもいる。
傷つかずに済むようにどこかで割り切ったほうがいいとかとも思う。
もしかしたら私は彼にとって単なる暇つぶしの相手なのかも知れない。
私が感じるほどに何かを感じていないかも知れない。
この感情はまだ恋とはいえない。いや、まだ認めたくない。傷つきたくない。
Like と Love の間…。常に針が揺れている。


所詮、男と女。いつかはどこかにたどり着くだろう。あえて行き先を尋ねない。
このままゆらゆらと流れに任せたい。
今の願いはシンプル。
彼をもっと知りたいということ、私を知って欲しいということ。
そして今夜もその声を聞かせて欲しい。